原因不明の慢性病は医・歯分業が元凶

95%が原因不明の慢性疾患

歯の噛み合わせ異常や顎の位置がズレることで、知らず知らずのうちに、からだにいろいろな症状を引き起こすことについて、医学界のみならず国民の間にも注目されている。
医学は世界的に急速な進化を遂げているようにも見える。

しかし、原因が全く判らないとされる全身系の慢性的な疾患が95%とも、また一説に98%ともいわれながら、政府や医学界も問題視していない状況である。
それらの原因について顎口腔、つまり噛み合わせや顎の位置異常と深く関連しているのではないか、とする見方がある。
これはひとり日本だけに限らず、医療先進国と言われる国々での共通の問題である。

何故かとの疑問に対して”近代歯科医療発展の結果”を指摘する声があることに重きをおかなければなるまい。
それら病名について代表的なものを挙げると、次のようなものがある。

『歯原病ーシゲンビョウ(歯原性の医原病)』=一般的にその原因が歯によって起きる症状を、総称的な意味で言われている。

『下顎位症候群ーカガクイショウコウグン』=噛み合わせなどの不調和により下顎の位置(下顎位)に偏位(ズレ)が起きるとし、それらが原因と見られる各種不定愁訴を言う。

『顎偏位症ーガクヘンイショウ』=一本の歯にも生態上の生理があるとし、これらはヒトのからだの一部でもあるところから、脳の指令を受けて運動する顎は本来、全身系との絶妙な整合性が保たれていなければならない。 また、顎に植立する一本一本の歯に何等かの不調和(虫歯治療の結果など)が生じた場合、それが引き金になって上下の顎の位置関係を微妙に狂わせてしまう。それらの結果は頭痛、肩こり、腰痛などをはじめとして全身系に及び、精神神経科領域までをも含む原因不明の症状が出る、とする概念を中心に据えている。

そして歯には食物を噛み砕くという機械的な咀嚼機能の他、食物を吟味する機能や会話などの発音発声機能があり、さらに加えて重要な要素は上下顎の位置関係を決定付けるという重要な機能がある。
その歯に何等かの不調和が起きると、特に下顎だけに限らず頭蓋に付く上顎歯槽骨の変形を含む上下の顎や、その位置関係に変化が起きる。
顎の偏位である。
従って、顎口腔を発生源とした顎顔面補強系や下顎と連動する各種臓器や器官及び下顎頭の周辺隣接領域の器官及び各種臓器本来の生理が乱れ、それらが二次的、あるいは時間的経過を伴いながら、体幹や上下肢の関節など全身系に及ぶ反応や病態など広範に亘る病状で、生態の歯牙を含む口腔の生理、下顎窩腔内の下顎頭の周辺隣接領域および、下顎体、ワルダイエル咽頭輪、オトガイ三角周辺隣接領域や甲状腺などの筋を含む軟組織に、また頚椎可動域の神経筋機構を介し、全身系へのさまざまな影響を視野に入れた考え方を総称的に顎偏位症という。
これらは従来の医学や歯科学の概念の外にあるためか、一部学者や臨床家は”文明病”などと称しているが、ヒトの身体にとって新たな病気という捉え方をするべきではない。
ヒトの身体を対象にする医学と歯科学の狭間に取り残され、さらに専門分科する課程で見失った「テーマ」、あるいは気付かなくなってしまった「領域」と考えるべきであり、文明病などとする姿勢はあまりにも短絡的で近視眼的な捉え方である。
近代医学系学問の閉塞性を省みない責任逃れの発言とも言える。

問題の根本は、地上でヒトが二足歩行を捕獲した時期に起因するもの、つまり四つんばいの状態の下顎は、地球の引力の影響を受け直下に垂れるため、二足歩行のヒトに発症する歯原生の医原病などは起きないものと考える。

因みに四足獣の顎で実験した研究があるが、極端な反応が出ること以外には、二足歩行のヒトの実態と比較すること自体、学問的にも的外れの実験と言わざるを得ない。
敢えて言えば、ヒト科のヒトは長い歴史の中で二足歩行を獲得したために、構造的に下顎の支点顎間接部に求めざるを得なくなった点にこそ注目すべきである。

以上のように構造上の理由に加え、文明的な生活を求め、誰もが便利な生活を日常としたことが大きく影響し、近年ヒトの骨質を含めたからだ自体が廃用症候群と言われるように”ひ弱”になったことと相俟って発症するものと考えられる。
そのような時代的背景の中で歯質や歯並びも極端に悪くなったこの30、40年、歯科においては水平治療台による施療が一般化し、加えて歯科医療器具の発達や各種術式が普遍的に取り入れられている。

その結果噛み合わせに異常を来たす例が世界的に見られることとなった、という紛れもない状況証拠がある。

一方、歯科医療を全く受けない場合の歯原病は”年のせい”として諦めることが多いが、個人的な感じ方の差はあっても、残念ながら二足歩行のヒトは、誰でもが遅かれ早かれ身をもって体験せざるを得ない身体構造になってしまったと言うことができる。

以上のことから今までの医科と歯科は、顎の動きと連動する顎関節や間接頭周辺の生理及び顎位と咽喉部及び頚椎の生理など、全身系の生理との整合性をテーマにした研究は全く行っていなかった、あるいは怠っていたと言うべきであり、全ての原因不明疾患の原因を探る過程で、皮肉にも近代の先端的医学研究が分極化し専門的に分析すればするほど、判りにくくなってしまった病気、または症状と捉えるべきであろう。

これらの症状は、特にヒトの生活環境や性差など、個人差が著しいのが特徴であり、噛み合わせや顎位の異状は顎口腔領域に限局された症状には止まらず全身系に波及し、場合によっては複合的に精神神経科領域の症状をも視野に入れる必要がある。
そして患者自身に実際に現れた症状で選択される診療科の診断や、その治療実態が問題の解決を一層難しいものにしてしまう傾向にあるということができる。
後の記述については、これらを総称して”いわゆる歯原病”あるいは”歯原性の医原病”とする。

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